自治体法務の備忘録

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「過料」の事例

 行政法の講義をしなきゃいけない、と他自治体の先輩から照会がありました。
先輩「市の条例に『過料』が規定されているものってある?」
私「山ほどありますよ」
 拙blogを読まれる方はご存じでしょうが、刑事罰である「罰金(1万円以上)」「科料(1万円未満)」とは異なり、行政庁が主体となる金銭罰です(自治体は条例に定めるところにより5万円以下の賦課が可能)。
 例えばほら、と挙げたのが手数料条例です。不正行為により徴収料を免れた者に対する過料規定があります。
先輩「いや、もっとわかりやすいやつ」
私「え?」
先輩「『秩序罰』の本質って、法律秩序の維持じゃない?」
私「はいはい」
先輩「紹介いただいたような事例だと『不正行為』が要件なんで、説明しても初心者には刑事罰との境界線の理解が難しいんだよ」
私「あー、なるほど。じゃあ、法律ですけど、こんなのどうでしょ」

住民基本台帳法】
第五十三条 (略)
2 正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで又は第二十五条の規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。

 ここで届出が必要とされているのは「転入届」「転居届」「転出届」「世帯変更届」です。
私「転入届をしなかったとしても『人として、それはいかがなものか』という議論にまで及ばないでしょう。行政の都合ということで『秩序維持』の説明がしやすいんじゃないですか」
 千代田区の喫煙禁止条例で罰金に代えて過料が選択された事例もあるように、その分水嶺はますます微妙になりつつあります。