自治体法務の備忘録

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増額の契約変更と債務負担行為

 よその自治体の方から質問をいただきました。

Q 複数年度にわたる契約に係る増額変更に際し、当初に設定の債務負担行為の上限額の範囲内であれば、新たな債務負担行為の設定は不要ではないか?
※当初契約時に「8%消費税」で複数年度の契約を行い、税率改定時に「10%消費税」の変更契約を行うことを想定とのこと。

 正解は、

A 増額分に係る債務負担行為に設定が新たに必要
※債務負担行為は、「契約の根拠」であるため

 年度をまたいでしまえば、既に設定済みの債務負担行為に基づいて契約を行うことは出来ません。
 したがって、増額分の変更契約を行う場合は、当該増額分の債務負担行為を新たに設定する必要があります。
 逆に言えば、契約締結の年度内であれば、当初の債務負担行為の上限額の範囲内で契約変更を行うことに差し支えはありません。なお、上限額を超えて増額変更を行おうとする場合は、当該債務負担行為を「増額補正」することになります。

Q 複数年度にわたる契約の最終年度に増額の変更契約を行おうとする場合、債務負担行為の変更は不要とされるのはなぜか

 正解は、

A 自治法214条は、自治体が債務の負担を行う場合の根拠に「歳出予算金額の例外として債務負担行為」を規定している。
 逆に言えば、歳出予算金額が債務負担の根拠となれば、債務負担行為の設定までは不要ということになる。

 そもそも債務負担行為は、歳出予算金額の範囲の及ばない債務に対処するものであるからです。
 ややこしくなってきましたね。ちょっと整理しましょう。

【単年度契約の締結】

  • 予算に基づき契約が可

【複数年度契約の締結】

  • 債務負担行為の設定に基づき可

【複数年度契約の増額変更】
○契約締結年度における変更
→上限額の範囲内である場合

  • 債務負担行為の補正は不要

→上限額を超える場合

  • 債務負担行為の増額補正

○契約締結年度以降の変更(最終年度以外)

  • 増額変更分の債務負担行為の設定が必要

 ※契約の根拠として債務負担行為が必要
○契約締結年度以降の変更(最終年度)

  • 債務負担行為の設定は不要

 ※歳出予算が根拠となるため。