自治体法務の備忘録

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Re:大都市=先進?

 tihoujitiさんがご掲載の記事から

大都市だからといって必ずしも先進的な条例を作らなければならないのではなく、慎重に見極めることも重要ではないだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20070703#p1

 営利を目的とした建築計画概要書の閲覧制度の制限についての横浜市の先進的な取組をご紹介した直後にいささか矛盾するようではありますが、「先進的」な条例は、規模の小さい自治体で成立する事例の方が多いかと思います。
 以前に、今では自治体の標準装備となった「情報公開条例」について、85年頃に検討していた自治体が県の地方課から呼び出され、

「法令に委任のない、国からの標準準則条例もしめされていない条例をつくることはけしからん。いつからお前の所はバチカン市国になったのか。勝手な条例を作るな」

と詰問された事例をご紹介したことがあります。→http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060629/p3
 また、情報公開といえば、nationfreeさんのご紹介によりますと、やはり「自治基本条例」の嚆矢となった「まちづくり基本条例」を制定した北海道ニセコ町では、求められる要求に積極的に情報提供を行う趣旨の制定があるそうです。

同町の情報公開条例は、すごくユニークな規定(第13条第1項第2号)を持っていて、

 (公開請求に係る町政情報が不存在の場合の手続)
第13条 実施機関は、公開請求に係る町政情報が存在しないときは、公開請求があった日から起算して15日以内に、次の各号のいずれかの措置を執らなければならない。
(1) 当該町政情報が不存在であることを理由として公開をしない旨の決定をすること。
(2) 当該公開請求に係る町政に関する文書等を新たに作成し、又は取得して、当該文書等を請求者に対して公開する旨の決定をすること。
ニセコ町情報公開条例の手引きより
http://www.town.niseko.hokkaido.jp/jyohokokai/koukaitebiki.htm

要するに、普通の情報公開条例は、
>ごめんなさい。情報がありません。
という事実を開示すれば、こと足りるものなのですが、ニセコの情報公開条例は、
>情報がなければ、すぐに「情報」を作って、公開しまっせ!!
という、ものすごい条例(制度設計)なのですね。ちょっと、ありえないです。
http://d.hatena.ne.jp/nationfree/20060217#p1

 同種の試みが横浜市の規模で行える可能性については、やはり否定的に考えざるを得ない。私見を述べれば、上記のニセコ町の取り組みは「住民と町との信頼関係」によるところにあるのではないかと思うのですが、かといって、もちろん、横浜市の住民が信頼に足らないなんてことをまさかいいたいわけではなくて、人口を含め自治体のスケール等の個別の事情から、限られたリソースを適正に配分するに当たっては、政策や法設計においてそれぞれの自治体の判断がなされるであろうということです。
 先進自治体の試みが後に一般的になる事例もあるとはいえ、先進条例をベンチマークにする際にはこの点を十分に考慮する必要があるでしょう。