自治体法務の備忘録

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白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭奉賛会損害賠償請求控訴事件

 議会準備の一段落して、ちょっと前に届いた「判例時報」誌No.2006(20年8月11日号)に目を通すと、以前にご紹介させていただいた(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20080409/p2)、白山市長による神社の行事参加が違憲とされた高裁判決が掲載されていました。
 また、同判決は、ウェブ上でも確認できます。

 また,大祭奉賛会は,会員から志納された奉賛金等を白山ひめ神社に奉納して,上記の本件大祭の斎行及びこれに伴う諸事業(本件事業)を奉賛することを目的として,白山ひめ神社が中心的に関与して結成され,同神社内に事務局を置く団体であり,その目的としている本件事業は,上記祭祀(本件大祭)自体を斎行することであるとともに,これに併せて,禊場,齋館,手水舎等,上記神社の信仰,礼拝,修行,普及のための施設を新設・移設し,同神社の神社史を発刊することを内容とするもので,同神社の宗教心の醸成を軸とし,神徳の発揚を目的とする事業とされているのであって,かかる本件事業が宗教活動であることは明らかであるし,これを目的とする大祭奉賛会が宗教上の団体であることもまた明らかというべきである。
 そして,本件発会式で,大祭奉賛会会長が「崇敬者の総力を結集して,奉賛事業が遂行されるよう」との挨拶を述べ,宮司も「崇敬者各位の協賛によって諸事業が完遂され,本件大祭が盛大に奉仕できるように協力を賜りたい」旨の言葉を述べ,参会者一同が,事業達成のため尽力することを誓い合い,本件発会式を祝ったことが認められるのであるから,本件発会式は,上に判示した大祭奉賛会の本件事業を遂行するため,すなわち,本件大祭を奉賛する宗教活動を遂行するために,その意思を確認し合い,団体の発足と活動の開始を宣明する目的で開催されたものであると認めるのが相当である。
 そうすると,白山市長であるAが来賓として本件発会式に出席し,白山市長として祝辞を述べた行為(本件行為)は,白山市長が,大祭奉賛会が行う宗教活動(本件事業)に賛同,賛助し,祝賀する趣旨を表明したものであり,ひいては,白山ひめ神社の宗教上の祭祀である本件大祭を奉賛し祝賀する趣旨を表明したものと解するのが相当であるし,本件行為についての一般人の宗教的評価としても,本件行為はそのような趣旨の行為であると理解し、白山市が,白山ひめ神社の祭祀である本件大祭を奉賛しているとの印象を抱くのが通常であると解される。また,前記事実関係からすれば,Aは,大祭奉賛会及び本件発会式が前記趣旨・目的のものであることを認識,理解していたものと認められ,したがって,同人は,主観的にも,大祭奉賛会が行う本件事業を賛助する意図があったものと推認され,ひいては,本件行為が白山ひめ神社の祭祀である本件大祭を奉賛するという宗教的意義・効果を持つことを十分に認識,了知して行動したものと認めるのが相当である。
http://www.tkclex.ne.jp/commentary/zn/zn28141068.html

 報道からは事業への参加の実態が不明でありましたが、津地鎮祭事件で示された判断基準を踏まえ、「発会式」自体の性格を考慮した結果ということなのでしょう。ご興味有る方は、比較のために、玉串料の奉納が違憲と判断された愛媛玉串料訴訟(最判平成9年4月2日)(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=25515&hanreiKbn=01)の内容も併せてご確認ください。
 とはいえ、ネットの情報によると市により上告がされているようですので、経過が注目されます。