自治体法務の備忘録

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ふるさと納税の「ワンストップ制度」化

 「ふるさと納税」について、税法上は寄附控除の制度であることは、拙blogをお読みの方でしたらご存知でしょう。
 「納税」の通称とは裏腹に、本来であれば自らが居住する自治体に納税すべき課税額の一部を控除するというものですから、自らが住居する自治体に「ふるさと納税」することだって可能です。
 寄附控除であればその分の税収入が減るわけですが、地方交付税の交付団体にあっては、基準財政収入額の減として減収額の75パーセントが交付税として措置されることになります。
 したがって、住民が自らが居住する自治体に「ふるさと納税」した場合、その自治体にとっては寄附額以上のメリットが生じることは、拙blogでも過去にご説明させていただきました。
【住民からの「ふるさと納税」】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20131111/p1
 さて、上記の控除を税額に反映させるためには、従来は寄附者の確定申告が必要であり、そのことが寄附のハードルにもなっているとの指摘がされていました。
 これに対し、平成27年税制改正により「ワンストップ特例制度」の導入が行われることとなっています。これは、ふるさと納税の納付先が5つまでの寄附者を対象として、「寄附先の自治体」から「居住する自治体」に寄附金情報を直接通知しようとするものです。
 ここで、自治体間の情報のやり取りに税務署は関与しません。実は、「ふるさと納税」による所得税の控除部分について住民税の控除に一本化されるというのです。
 もうちょっと詳しくご説明しましょう。

【従来】
 「所得税+住民税」の控除
【ワンストップ制度化】
 控除割合が市町村60%・都道府県40%の住民税控除に一本化

 ワンストップ化自体は利用者の利便の向上を目的とするものですが、結果として、所得税の控除分を住民税に振替えることにより国庫への歳入は減らないという仕組みです。
 なお、自民・公明の税制大綱の30ページから40ページに記述があります。→http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/126806_1.pdf
 もし、私が居住するA市に隣接する県内のB市に寄附を行った場合、A市はさておき(それだって、所得税の減少分が上乗せされるのですが)、県庁にあっても所得税のうち一定の割合が負担になるのは、いささか奇妙な気もします。
 これは、前述の「寄附控除に伴う基準財政収入額の減」に対し、国が交付税の財源を用意しようとするものなのでしょうか。とはいえ、「ふるさと納税」を都道府県に行うことも可能ですので、市町村間だけではなく都道府県も含め、寄附の向上に努めるべきというのが制度の意図なのかもしれません。