自治体法務の備忘録

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「使用料」と「利用料金」

 指定管理者制度の導入に当たり、その指定の手続等に関する条例において、「使用料」について、「公募の要件」「協定書」「事業報告書」のそれぞれに規定することは可能か。
 まず、地方自治法を見てみましましょう。

(使用料)
第225条 普通地方公共団体は、第238条の4第4項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。
(分担金等に関する規制及び罰則)
第228条 分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。
2及び3 (略)

(公の施設の設置、管理及び廃止)
第244条の2 (略)
2〜7 (略)
8 普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。
9 前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
10及び11 (略)

 利用料金の性格を確認しましょう。

逐条地方自治法

逐条地方自治法

『利用料金』は、公の施設の利用の対価であり、公の施設の使用料(法225)に相応するものである。
(略)
使用料を徴するか利用料によるかは当該地方公共団体が条例で定める
(略)
利用料金は、地方公共団体の収入ではなく、指定管理者(又は管理受託者)の収入とされる」
(934ページ)

 上記のとおり、「利用料金」は「使用料」に、あくまでも「相応」するものであって、その概念、取扱い等がどちらかに含まれたり、取り扱いに当たって重複するものではない。
 具体的に、これらを条例において規定する場合は、それぞれの場合に応じて「(利用料金)」「(使用料)」の見出しを使用するものと指摘されている。

指定管理者制度

指定管理者制度

(46ページ)
 使用料金制度のもとで指定管理者制度が導入された場合は、「(指定管理者が)利用者から徴収した使用料はすべて自治体の歳入とされ、受託者に対する委託管理費は、別途、当該自治体から受託者に契約金として支払われることになる」(前掲)
 では、指定管理者の指定の手続等に関する条例において、使用料の取扱いを規定することについて問題はあるか。
 上記のとおり、使用料の取扱いについては、別途の委託契約を根拠にするものであり、「指定に係る手続等」について定める条例の射程範囲外あり、「公募の要件」「協定書」「事業報告書」の各内容において、「使用料」について定めることは妥当では無いのではないか。
 少なくとも、「事業報告書」において、使用料制度下で施設の利用状況に密接に関係する金銭の授受について委託者である自治体が当該施設の管理状況を積極的に収集するための手段として規定するのは手段として検討できるが、「公募の要件」や「協定書」において必須の事項とすることは無理があるのではないか。
 もっとも、実際的な問題として、施設管理者が使用料を徴収することが望ましいとの想定から、「指定管理者は、市からの委託契約により使用料の徴収をおこなうものとする。」という規定を設けることまで否定するものではないですが。
 先行自治体において、これらの項目に「使用料」が規定されているものがあるのは、上記の想定を行っているということであろうか。
 しかし、受託する指定管理者にとってみれば、それは余計な「期待」ではないのか。
 指定管理者制度については、先般の附則の問題など、いろいろ検討しなければいけない事項があって困ってます(^^;