自治体法務の備忘録

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市長は賠償の責を負えるのか

 結構、以下の内容で規定している自治体が多いので。

【T市公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例 】
(指定の取消し等)
第8条 市長等は、指定管理者が次の各号のいずれかに該当するときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて管理の業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

  1. 前条に規定する市長等の指示に従わないとき。
  2. 指定管理者の責めに帰すべき事由により、当該指定管理者による管理を継続することができないと認めるとき。
  3. 第11条(第2項後段を除く。)に規定する個人情報の取扱いに関する義務に違反したとき。
  4. 前3号に準ずる不適切な行為が認められるとき。

2 前項の規定により指定を取り消し、又は期間を定めて管理の業務の全部若しくは一部の停止を命じた場合において、指定管理者に損害が生じても、市長等はその賠償の責めを負わない。

 第2項の「賠償の責め」の主体は、「市長等」ではなく「市」ではないか。
 「市長等」とは、「市長又は教育委員会」として定義されているのですが、少なくとも「教育委員会」が対外的に賠償の責を追う立場でないことは明白でしょう。一歩進めて行政庁たる「市長」においても同様ですよね。「賠償の責」は、民事上の損害賠償の意だとすると、対外的には「市」であるべきでしょう。
 実際に、指定管理者が行う賠償の相手先は「市」と規定されています。

(損害賠償義務)
第10条 指定管理者は、故意又は過失によりその管理する公の施設の当該施設又は設備を損傷し、又は滅失したときは、それによって生じた損害を市に賠償しなければならない。ただし、市長等が特別の事情があると認めるときは、その全部又は一部を免除することができる。

私「というより、行政庁は賠償の責を負えない旨の確認規定なのかな」
同僚「いやあ、それはどうか」
私「でもさ、処分行為の後に、その民事上の賠償責任について条例で一方的に回避する宣言の規定って、ちょっと奇妙ではあるよね。宣言したからと言って、それを根拠に責任を回避するわけにはいかないし」
同僚「『指定管理者の責めに帰すべき事由により』等の前提がありますから、確認的な宣言ということなんでしょうね。実際に訴訟になった場合、個別の事例の内容が検討されるわけでしょうから」
私「でも、それを協定書の内容ではなくて、自治立法たる条例で規定するんだ」
同僚「それをいったら、第8条自体が地方自治法の第244条の2第11項をほぼなぞったものですし、第10条も確認的な規定ですよね。条例の内容・構成だけで、ある程度わかりやすいものを作成しようと言う意図なのでしょうね。それより、このような規定を設けると言うことは、『前項の規定』によらない場合は賠償の責を負うものだと読めませんかね(にやり)」
私「反対解釈ですか!」